第118回 卒業証書授与式(平成29年3月1日(水))
吹奏楽部演奏 卒業生入場
卒業証書授与 校長告諭
来賓紹介 在校生総代送辞
卒業生総代答辞 式歌斉唱
校歌斉唱 閉式の辞
卒業生退場 3学年団挨拶

【平成28年度 三重県立四日市商業高等学校卒業式 校長告諭】

 凛とした空気に鈴鹿の山々が美しく輝く佳き日に、本校第118回卒業証書授与式を多数のご来賓の皆様や保護者の皆様の ご臨席のもとで行わせていただき、この上ない喜びでございます。 山本里香県会議員様はじめ来賓の皆様にはご多用中にもかかわらずご出席いただきまして誠にありがとうございます。 高い席からではございますが、深く御礼申し上げます。 また、保護者の皆様におかれましては、お子様のご卒業誠におめでとうございます。 また、入学以来学校からもいろいろとお願いごとなどもさせていただきましたが、 3年間本校教育活動へのご理解とご支援をいただきましたことに厚く御礼申し上げます。
 さて、卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さん創立120周年の節目での卒業となりました。 さかのぼれば明治32年3月に第1期の卒業生9名を送り出して以来、118回卒業生の皆さん278名を加え総計24046人の卒業生の仲間入りです。 泗商での三年間はどうでしたか。 皆さんの今までの18年間の中でどのような位置をしめているのかは、一人ひとり違うのだろうと思います。 中学校までとは違う学習や生活に大変苦労した人も多いのではないかと思います。 それでも、その苦労が皆さんの成長の肥やしとなって、今の立派な姿に結実しているのだと思います。 これから就職する人、進学する人、道はそれぞれですが、社会へでて、これからは次代を担っていく皆さんに少しお話をしておきたいと思います。
 NHKの「プロフェショナル」~仕事の流儀~という番組があります。 この番組には様々なジャンルの一流の人たちの仕事や働き方を通してその人の考え方や生き様を浮き彫りにしていくドキュメント番組です。 有名どころでは、芸能界のSMAPや松本人志、スポーツ界では、イチロー、本田圭佑、北島康介、ジャンプの葛西紀明、宮崎駿監督、といったそうそうたる面々がいる一方で、一般には知られていないけれども地道にその道を極めてきた一流の職業人が登場します。 彼らには決まって番組の最後に「あなたにとってのプロフェッショナルとは」という質問がされます。 その回答のいくつかを今日は皆さんに紹介していきたいと思います。
 ナウシカやトトロなどスタジオジブリ作品の多くを手がけた宮崎駿監督はこう答えています「半分素人の方がいいんです。 それは自分が選択して、自分がプロだからやるんじゃなくて、自分がこれをやりたいと思うからこれをやってるんだという。 やっぱり精神の方が大切なんですよ」。映画監督らしい夢のある意見。一方脚本家の三谷幸喜はそれとは少し対照的な意見で「期待に応えるということ。 自分のやりたいものをやるのではなくて、人が自分にやってほしいものをやるということ」。 これもなるほどそうだなという感想です。
 囲碁で7冠を達成した、プロ棋士第一人者の井山裕太は「どんなに苦しい局面でも、どんな未知な世界に入っても、やっぱり自分を信じる、ということに尽きますね」。 囲碁を多少たしなむ私として納得です。
 昨年惜しまれつつ解散したSMAPの面々も登場してます。 中居くん「一流の素人、一流の二番手、一流の二流、自分にはそれが合ってるかなと」。 キムタクは「最前線から逃げない人。風当たりは強いけど、前に進み続ける限り最前線にいられるかな」。 稲垣くん「あえて人を否定することなく、自分に与えられた仕事を責任をもって果たし、仕事の持つメッセージを人に伝えていくこと」。 草なぎ剛「チームワーク、仲間を大切にする人、自分の力以上のものを出すには仲間やチームワークを大切にするのがプロフェッショナルだと思う」。 香取慎吾「明日を生きる人。今を生きるのはもちろんだが、一歩二歩先へ。振り返りません、ぼくらは」それぞれ違います。
 いつも深いコメント残すイチロー選手は「ファンを圧倒し、相手を圧倒し、圧倒的な結果を残すということです」。 こう聞くといかにもプロ野球選手らしい威勢のいい言葉に聞こえますが、番組のコンテクストを加えると彼が何を思いまた乗り越えてこう考えているのが伝わってきます。 「4000本のヒットを打つには、僕の数字でいくと8000回以上の悔しい思いをしているんですよね。 それと常に自分なりに向き合ってきたこと。その事実はあるので、誇れるとしたらそこじゃないかなと思いますね」。 非常に彼らしい考え方かと思います。
 そして、歌舞伎役者の市川海老蔵は、「今日の自分を超えることを継続し続ける人」と答えていますが、この傾向の回答が多くみられました。 岡村隆史「ありきたりな言葉でつないでしまう自分が恥ずかしいのですが、自分の目標に向かって、まっすぐ努力を惜しまず、常にベストを尽くせる人だと思います」。 焼き鳥職人の池川直輝さん「相手に素直に向き合い、日々格闘し続ける人」。 地方創生を実践している公務員寺本英仁さん「今日よりも明日、明日よりも明後日、仕事がうまくいくように小さな積み重ねができる人」。 50歳の現役Jリーガー三浦和良さん「一言では難しいけど、何事にも全力を出し切る人、出せる人じゃないかな」。 宇宙飛行士の若田光一さん「自分の限界がどこにあるか経験から知っていて、それに向かってたゆまぬ努力ができる人」。 やはり一流の人たちも努力や向上心というのがキーワードになるのですね。
 最後に、もう一人新津春子という人を紹介します。 皆さんご存知ですか?羽田空港は世界最大の航空業界格付け会社スカイトラックス社が公開している格付けにおいて、世界で最も清潔な空港第1位に何年も連続でランクされています。 彼女はその羽田空港のナーミナルビルで清掃業務の指導的役割を果たしている人です。 元は中国で生まれた残留日本人孤児である彼女は17歳で日本に戻りました。 家族全員日本語できないこともありなかなか仕事に就けませんでしたが、言葉はできなくても掃除はできるということで清掃の仕事につき、もう20年以上その仕事を続けてきています。 当時も今も清掃業の社会的な地位は高くないですが、そんなことは彼女は全く気にしていません。 彼女は清掃の仕事が大好きですし今では誇りも持っています。彼女は汚れやごみをみつけると納得いくまできれいにしていきます。 使う洗剤は80種類以上、ほかの人がやってもきれいにならないところこそ、彼女の出番です。時間を惜しんだり、面倒くさがったりいっさいせず、最後には必ずやり遂げます。 例えばトイレの手の温風乾燥機も外見だけをきれいにするのではなく、臭いが残ってはいけないと分解掃除をはじめます。 その徹底ぶりは便器はもちろん、床、ガラス、鏡、あらゆるものに及び、空間そのものを清掃しているようなのです。 誰がやったからということじゃなく、とにかく使ってくれる人が気持ちよく使ってくれればいいじゃないと。 とにかく心を込める・・・心とは自分の優しい気持ちなのだそうです。 心を込めないと本当の意味できれいにできないと言います。その番組ディレクターは彼女に一か月密着した後、こう述懐しています。 「この番組で紹介した様々な分野の一流と呼ばれる方の多くはすでにメディアにも注目され、社会的な評価も受けています。 でも今回改めて感じたのは、プロ中のプロというのは地位や名誉とは別のところにいる。 気づかないないだけで実は身近にいるのかもしれない。そしてそういう人が人知れず誰かのために全力を尽くしている姿にこそ心が動かされるのではないかと。」 このディレクター自身、彼女に密着した一ヶ月取材者としての姿勢を見つめ直し、まるで心が洗われていくようだったと語っています。 そしてその彼女への例のプロフェッショナルとは?の質問の回答は「目標を持って、日々努力をし、どんな仕事でも心を込めれる人がプロフェッショナルだと思います」というものでした。
 今時代はグローバル化や情報化の波の真っ只中にあるとともに、多様化も猛烈な速度で進んでいます。 それでも、今述べてきたような「心を込める」とか「真面目に努力する」ことの価値はいささかも色褪せるものではありません。 泗商は至誠を校訓としており、誠意を持ち真面目にひたむきに努力することは本校の大きな誇りの一つです。 昨日三年間様々な分野で活躍した約250名の皆さんを表彰させていただいたことにその一端が現れています。 とりわけ、皆勤賞69名という数字には皆さんの思いと日々の努力の積み重ねが象徴されており、誇りとするところです。 その誠実さを大切にしながらも、今後より広い社会で皆さんが担い手となって活躍されんためには、何度も皆さんにお伝えしてきたように自立や挑戦という積極性が更に求められることになります。 失敗することは嬉しくないことですし、何かをやろうとすれば必ず苦労があります。 でも先ほどのイチローの言葉をその時思い出すのです。その辛いこと失敗にもしっかり向き合いながら人生を切り開いていける人になってもらいたいと思います。 自分一人の力で切り開けないときは草なぎくんの言葉を思い出し、仲間を頼ってください。 悩んだら学校へ相談にきてください。
 ドイツの哲学者ニーチェは「世界には、きみ以外には誰も歩むことのできない唯一の道がある。その道はどこに行き着くのか、と問うてはならない。ひたすら進め。」 そうなのです、皆さん一人ひとりの人生は他の誰もたどることのできない唯一あなただけの人生です。 その唯一無二の人生を一人ひとりが心を込めて努力しながらしっかり生き抜いていくことが皆さん一人ひとりの幸せや充実した人生、そして、この社会の明るい未来につながると信じます。 今後の皆さんに幸多かれと祈り、皆さんがそれぞれの道でプロ中のプロとして輝くことを願い、私からの卒業式の告諭といたします。
 第35代校長 鳥井 誠司
平成29年3月1日